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キーワード!労災・労災事故ニュース

労災や労災事故をキーワードに気になるニュースをまとめています。

「指示なければ事故に遭っていないはず」…宮大工の遺族、労災認定求め提訴へ-大阪地裁

 日当を受け取りながら労働者でなく自営業者と判断され、建築現場の死亡事故で労災補償されなかったのは不当として、死亡した宮大工の男性=当時(44)、京都府長岡京市=の妻(40)が16日にも、労災認定を求める行政訴訟を大阪地裁に起こす。雇用と請負の線引きがあいまいなまま口頭で契約を結ぶ慣行がある建設業界。事故後、労働者が自営業者とみなされて給付金を受け取れないケースも多く、こうした実態に一石を投じる訴訟になりそうだ。
 訴えによると、男性は工務店を営む知人から口頭で依頼され、平成26年2~4月、香川県内の神社と埼玉県内の作業場で屋根の修理工事に従事。4月29日、埼玉の現場で作業中に屋根から約7メートル下の地面へ転落し、3日後に死亡した。
 男性が日常はフリーの宮大工として仕事していたことなどから、川越労働基準監督署は同年12月、男性は自営業者で仕事は請負だったとみなし、給付金の不支給を決定。埼玉労働局の労災保険審査官も今年5月、同様の判断を下した。
 ところが今回、男性には工事の進捗(しんちょく)状況と関係なく日当として2万円が継続して支払われており、事故当日は知人も屋根に上がって作業を分担していた。このため妻側は、男性が実質的に知人から労働者として雇用されており、労災として救済されるべきだと主張している。
 労基署と審査官が不支給の根拠とした平成8年公表の判断基準は、雇用か請負か不明確な形態を見極めるポイントを列記しているが、「日当による日給月給制の場合は労働者」という前提も示している。
 妻側代理人の古川拓弁護士(京都弁護士会)は「労基署の決定は判断基準の前提を無視している」と話している。


■「慎重な夫が事故に遭うなんて」

 「もし指示を受けずに自分の責任で仕事を進めていたら、慎重な性格の夫が事故に遭うはずはなかった」。妻はそう考えている。
 男性は高校卒業後、社寺建築を専門に行う建築会社に入社し、約20年勤めた後に宮大工として独立。伏見稲荷大社京都市伏見区)の改修工事などで腕を磨いた。大きなけがをしたことは、一度もなかった。
 職人かたぎで人の好き嫌いは激しかったが、会社時代の先輩だった知人には信頼を寄せていた。香川から京都の自宅に戻った4月27日、「早く来てほしいと言われた」と妻に言い残し、翌朝埼玉へ向かってその日のうちに作業を始めた。
 29日午後、現場で雨が降り、知人が命綱を取りに屋根を降りていた間に、男性は足を滑らせて転落した。動転する妻に知人は「できるだけのことはします」と話したが、事故の詳細は説明せず、次第に態度もよそよそしくなったという。
 子供は3人。小6になった次男は最近、跡を継いで宮大工になりたいと言い出した。夫を誇りに感じる半面、なぜ亡くならねばならなかったのかと思うと、やるせなく、悲しい。「残された私たちの生活のためにも、労災を認めてほしい」。妻はそう願っている。